2023アートセミナー錦田氏報告
2023年11月17日 第5回 巻十二「須磨」・巻十三「明石」当初10月6日(金)に予定されていた第5回は、講師のご都合により11月17日(金)に
代替開催となりました。
『須磨』では、父・桐壺院が亡くなり政敵からの圧迫が強くなる中、
さらに右大臣の娘・朧月夜との仲が発覚します。追い詰められた光源氏は、自ら都を離れ須磨に退去。畿内西端での男所帯の侘び住まいで、光源氏も男性従者も望郷の思いを募らせます。
『明石』では、連日の荒れ模様の中、嵐が鎮まるよう住吉の神に祈りますが、落雷で邸が火事に見舞われます。<嵐が収まりまどろむ光源氏の夢枕に桐壺院が現れ、須磨を離れ都に戻るよう告げます。翌朝、夢のお告げと言って小舟で迎えに来た明石入道に導かれ、明石に移ります。
(その後、光源氏は入道の娘・明石の方と結ばれ姫君を授かり、帰京後は順調に昇進し、雅やかな栄華の時代を迎えるのです。)
都での若き日は、母性を追い続けるも満たされず、女性たちの間で過ごした優美で不確かな青年期であり、須磨での男所帯の侘び住まいは、後の成熟した壮年期を迎えるための転換期として重要な意味を持つと言えるでしょう、とのお話でした。
受講生全員による音読は、コロナ下では控えていましたが、今回久しぶりに行うことができました。受講生からは、「もう一度教科書を復習してみます」「身近な場所が舞台なので、興味深かった」「先生の朗読は流れるようで分かりやすかった」などの声が寄せられました。
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2023年12月1日 第6回 巻三十四「若菜上」
朱雀院は病気を患い出家しようとしますが、後ろ楯のない愛娘女三の宮の将来を心配し、
娘を弟の源氏に託します。源氏は兄の懇請を拒み切れず女三の宮を妻として六条院に迎え入れましたが、そのことで紫の上は深く傷つきます。
春の六条院では夕霧や柏木など若い公達が集まって、華やかな蹴鞠の宴が催されていました。
偶然にも唐猫のいたずらによって御簾が引き上げられ、女三の宮の姿があらわになってしまいます。 かねて女三の宮に思いを寄せていた柏木は、この垣間見によって思慕の念をますます募らせるのです。
六条院は、この世のすべての成功を手にした光源氏の、栄耀栄華を象徴する場所でした。
しかし、柏木の一方的な情熱がその絶対的安定感を揺るがします。 光に満ちた世界に陰りが差し、六条院の栄華は根底から覆されていくことになります。 やがて光源氏は自らの罪深さと因果応報の節理に直面せざるをえなくなり、苦悩に満ちた晩年期へと 向かっていきます。
これから起こる悲劇を予感させ、作品全体のスリリングな転換点となっているこの場面は、
「源氏物語」の中でも屈指の名場面と言えるでしょう、とのお話でした。
受講者からは、「臨場感にあふれた解説で大変勉強になった」 「とてもわくわくした。自分で読むだけではこのような深堀りはできない」 「今だからわかる古典の奥深さを知った」などの声が寄せられました。
今回で錦田先生のご講義は最後となりました。長い間ありがとうございました。


