2022アートセミナー報告 錦田先生

「源氏物語」は登場人物400人、原稿用紙にすると2300枚にも及ぶ大長編で、しかも文章は複雑です。文の途中で主語が変わることもあります。このため、錦田先生のご指導のもと、文中の会話に「」を付けたり、マーカーで重要な古語をチェックしたり、また敬語や文法に注意を払いながらじっくりと理解を深めて読み込みました。最後は全員で音読し、原文で源氏物語の世界を楽しむことができました。


第一回、巻一「桐壺」では、スタートにふさわしく、「光源氏の誕生」というテーマでご講義いただきました。
帝の寵愛を受けた桐壺更衣のこと、宮中での複雑な人間模様、その間に生まれた美しい皇子があえて臣籍降下して源氏の姓を賜る経緯などについて学びました。

第二回のテーマは "「桐壺」と 白居易 「長恨歌」"  です。
桐壺の更衣を失くした桐壺帝の悲しみを記した場面では、白居易の「長恨歌」の中の「比翼の鳥」、「連理の枝」などを紫式部が模して書いたと思われる表現がいくつか見あたります。
これらから、当時、「源氏物語」の読者であった宮廷メンバーは必ず中唐の詩人 白居易の「長恨歌」を読み、教養として知っていたこと、また、紫式部自身、「長恨歌」のテーマ"純愛"から着想を得て、二重三重にイメージを膨らませたということが伺えます。
先生のご指導のもと、「長恨歌」を朗読してから「桐壺」を読みますと、まさしく、桐壺帝が、この玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋物語とご自分の悲恋を重ねあわせて、桐壺の死をお嘆きになっていることが、より理解できました。
今回も「『源氏物語』は原文を読んでこそ楽しめるのですよ。」という錦田先生のお言葉どおりのご講義でした。