《第2回》スペイン、エル・エスコリアル宮殿探訪:死を思う国王フェリペ2世の祈りの空間

スペイン・マドリッド県のエル・エスコリアル宮殿について解説いただきました。フェリペ2世によって建てられたもので、聖堂を中心にして宮殿と修道院がある、非常にユニークな建物です。フェリペ2世は、父カルロス1世が獲得した領土を引き継いだだけではなく、新たにポルトガルの王位も継承するなど、莫大な富と権力を手に入れました。彼がこのユニークな宮殿を建てた理由は、建物の美術装飾を見ていくことで解明されるそうです。

まず天井のフレスコ画は、三位一体を頂点として死後の救済が描かれています。主祭壇の絵は、画家を交代させて描き直しを命じたほど、フェリペ2世のこだわりが見られるそうです。その下にある聖櫃は、聖体が納められている場所で、さらにその下の地下には、王室墓所があります。死後の救済を求めてここから天井へと昇っていく構造に、一族の救済の祈りが読み取れるとのことです。

一方、この建物にはフェリペ2世の寝室もあります。寝室は聖堂から通路で直結した場所にあり、枕元から祭壇が見えるようになっています。通路の途中には個人礼拝堂があり、ティツィアーノの《十字架を担うキリスト》が飾られ、王は毎夜ここで過ごしたと言われているそうです。

このようにこの宮殿は、世界の海を支配した権力者フェリペ2世が、死を思う祈りの空間として建てられたと言えるとのお話でした。

「世界史も含めてのお話で分かりやすかった」「フェリペ2世と日本の使節との関わりが面白かった」「ぜひ訪ねてみたいです」などの感想が聞かれました。