アートセミナー錦田氏報告 (第6回)

朱雀院は病気を患い出家しようとしますが、後ろ楯のない愛娘女三の宮の将来を心配し、
娘を弟の源氏に託します。源氏は兄の懇請を拒み切れず女三の宮を妻として六条院に迎え入れましたが、そのことで紫の上は深く傷つきます。

春の六条院では夕霧や柏木など若い公達が集まって、華やかな蹴鞠の宴が催されていました。
偶然にも唐猫のいたずらによって御簾が引き上げられ、女三の宮の姿があらわになってしまいます。 かねて女三の宮に思いを寄せていた柏木は、この垣間見によって思慕の念をますます募らせるのです。

六条院は、この世のすべての成功を手にした光源氏の、栄耀栄華を象徴する場所でした。
しかし、柏木の一方的な情熱がその絶対的安定感を揺るがします。 光に満ちた世界に陰りが差し、六条院の栄華は根底から覆されていくことになります。 やがて光源氏は自らの罪深さと因果応報の節理に直面せざるをえなくなり、苦悩に満ちた晩年期へと 向かっていきます。

これから起こる悲劇を予感させ、作品全体のスリリングな転換点となっているこの場面は、
「源氏物語」の中でも屈指の名場面と言えるでしょう、とのお話でした。

受講者からは、「臨場感にあふれた解説で大変勉強になった」 「とてもわくわくした。自分で読むだけではこのような深堀りはできない」 「今だからわかる古典の奥深さを知った」などの声が寄せられました。

今回で錦田先生のご講義は最後となりました。長い間ありがとうございました。