2024アートセミナー「神戸女学院 岡田山キャンパスの過去・現在・未来 ー創立150周年に寄せてー 」報告2.
今回は、『重要文化財 神戸女学院 ―ヴォーリズ建築の魅力とメッセージ〈創立140周年記念版改訂版〉』(2019年発行)という美しいカラー写真が満載の冊子や、講師が訪問したボストンの教会や図書館の写真などを見ながら、重要文化財神戸女学院の魅力をさまざまな角度から紹介していただきました。
重要文化財に指定された建物の現在の写真を1933(昭和8)年の移転当初の写真と比べると、当時からほとんど変わっていないことがわかります。この点も重要文化財に指定される際の大きな評価点になりました。しかし第二次世界大戦の際の金属提出によりとりはずされたバルコニーや照明器具などは、戦後再建されたものもありますが、失われたままのものもあります。文学館の玄関の扉上部に設置されていたロートアイアンの飾りもこの時取り外されましたが、型を取ってベニヤ板の代替品が作られ、今も扉上部を飾っています。戦中・戦後の厳しい時期にも校舎の美観が大切に守られていたことがわかります。
「キャンパス造営は困難な事業でしたが、スタンフォード大学によく似た、渡り廊下が特徴的な素晴らしいキャンパスが出来上がりました」とは岡田山キャンパスの総建築委員長を務めたH.W.ハケット氏のご子息、R.F.ハケット氏がキャンパス移転80周年に際して寄せてくださった祝辞の中で語られた言葉です。実際、文学館、図書館、理学館、総務館の四館にはそれぞれ玄関が設けられているものの、ほとんどの人は、そこからではなく渡り廊下を利用して各館に出入りしています。そして中庭を挟んで対称に建てられた文学館と理学館は窓などのデザインなどが微妙に変えてあり、それが洒落た雰囲気を演出しています。
ソールチャペルのバラ窓が建物の中からはほぼ見えなくなっているのは、のちにパイプオルガンが設置されたためです。またソールチャペルの二階の三つ葉のクローバーがあしらわれた欄干は、神戸教会の旧会堂にあったものをいただいて使わせていただいています。三つ葉のクローバーのデザインは会衆派教会の流れをくむ教会でよく見られ、米国ボストンのオールド・サウス教会にも同じデザインが使われています。またボストン公共図書館の中庭や閲覧室の作りには神戸女学院との類似点が見られます。当時のボストンにはアメリカンボード(会衆派教会の海外宣教団体)の本部もあり、会衆派の自由な校風の神戸女学院とボストンとの深いつながりが感じられます。
最後に、デフォレスト先生が1951年に神戸女学院大学女子青年会に寄せてくださった詩を引いて、神戸女学院の建物は重要文化財になったから尊いのではなく、神戸女学院魂を養い育てる場所に相応しい器として私たちに与えられているものであり、これからも大切にしていってほしいと締め括られました。