2024アートセミナー「神戸女学院 岡田山キャンパスの過去・現在・未来 ー創立150周年に寄せてー 」報告

1933年に竣工した神戸女学院岡田山キャンパスは、2014年9月に創建時のヴォーリズ建築12棟が国の重要文化財に指定されました。「自然との調和をふまえた合理的なキャンパスで意匠的にも完成度が高く、昭和初期の建物群として価値が高い」、というのが指定された理由です。今回は、このキャンパス造営を導いた3人のアメリカ人について講演されました。

1人目は神戸女学院第5代院長のデフォレスト先生です。山本通から岡田山へ、キャンパス移転時の院長で、手狭になった山本通に代わる理想のキャンパスを求めて、資金集め等に力を尽くされました。

2人目は岡田山キャンパスを設計したヴォーリズ氏です。1934年4月に挙行された新しいキャンパスの献堂式のためにヴォーリズが作詞・作曲した「献堂讃美歌」を聴くと、彼がこの新しい校舎にこめた思いがよくわかります。彼の設計思想はキリスト教に根ざした神戸女学院のリベラルアーツ教育の精神とまさしく合致するものでした。

そして3人目は、新キャンパス造営の大事業を実務的に支えた学院の財務主管で、新校舎の建築委員長を務めた、財務担当宣教師のハケット氏です。

図書館本館にあるらせん階段は「真実に至る道は曲がりくねった階段をのぼるようなものである」という精神を象徴するものとして、ハケット氏の発案によってつくられたと言われています。日米関係の悪化により1941年に帰米しましたが、終戦後再び来日したハケット氏は、今度は国際基督教大学の創設に初代財務担当副学長として関わり、主任建築家に選任されたヴォーリズ氏と時を経て再び協働する機会を得たのでした。

受講者からは「ハケット氏については初めて聴く話ばかりで、興味深かった」、「この岡田山に学校を作られた方々の物語がリアルに感じられ、熱意と覚悟が伝わってきた」などの感想が寄せられました。