2025 アートセミナー報告2.

今回は建築様式に込められた潜在的な意味を読み解くというテーマで、建築
モニュメントや景観に焦点を当てて講演していただきました。
具体例として、ホワイトハウスが古代ギリシャの神殿建築を模倣していること
を挙げました。これは単なる美しさだけでなく、「ヨーロッパ文明の源流」
「民主主義の発祥の地」「強大なローマ帝国の建築様式」といった意味が込め
られており、アメリカという新しい国の権威を示す意図があり、さらにワシン
トンDCの都市景観全体が、このようなメッセージを読み取れるように設計され
ているといえます。
そして今回の主役であるアルハンブラ宮殿が、なぜキリスト教徒に征服された
イスラム建築なのに破壊されずに残ったのかを考察しました。
建築様式の美しさだけでなく、征服した側の政治的意図、特に新旧の権威の交代
と継承を可視化するシンボルとしての意味があったことを示唆します。
カルロス1世がアルハンブラ宮殿内に建設させた古典主義様式の宮殿は、その昔
ローマ帝国時代の五大賢帝の一人であるハドリアヌス皇帝の別邸を模したと言わ
れています。イスラム建築の正面を塞ぐように配置された建物は、その権力と征
服の事実を明確に示しています。
カルロス1世が自らをハドリアヌス皇帝になぞらえ、さらに全世界を一つにする
普遍の君主国建設のヴィジョンをモニュメントに刻みこんだアルハンブラ宮殿は、
まさに権力者たちの古代ローマへのあこがれと夢が刻まれているというとても興
味深い講演でした。
受講者の方から、「とても興味深かった、ぜひアルハンブラ宮殿へ行ってみたく
なった」、または「今日の講演を聞いてもう一度行きたくなった」との声も多く
いただきました。