2025 アートセミナー報告1.
今回はマニエリスムの代表的な画家、ブロンズィーノの作品『愛のアレゴリー』をじっくりと読み解きました。マニエリスムとは盛期ルネサンスに既に確立した様式・手法(「マニエラ」)をさまざまに組み合わせて、さらに洗練された表現を目指した芸術様式です。
まずこの絵の正面手前の女性と少年は誰でしょうか?少年には翼があるのでクピド、女性は母親のウェヌスで、二人は禁じられた快楽の世界にいるものと思われます。次に背後の暗がりに描かれた女性は何なのか?よく見ると彼女は半身半獣で、手には蜂の巣とサソリを持っています。1603年に出版された「エンブレム・ブック」の『イコノロジア』ではこの図像は「甘いものに見えて実は毒」、つまり「欺瞞」を意味するとしています。
「裸のウェヌスと彼女に接吻しているクピドの側には快楽と戯れが、またもう一方の側には欺瞞と嫉妬が描かれている」とはヴァザーリの解釈ですが、これが正解とは限らず他の解釈の余地を残すところにマニエリスムの面白さがあります。マニエリスムの美術は各地の宮廷で広まり、奇想に富み、時に複雑な寓意を含んだ作品を数多く生みだしました。