2021キリスト教セミナー報告
「死を考える、いのちを考える」
2021キリスト教セミナー報告
死を考える、いのちを考える
2021年度のキリスト教セミナーは感染症対策として、録画配信のみでの開催となりました。
海外や東京など遠方からも受講していただき、皆さまからご好評いただきました。
第1回 聖書の民の捉えた死とその彼方
講師:神戸女学院 院長 飯 謙氏
録画配信:2022年2月1日~2月14日
旧約聖書のテクストをたどりながら、人々が死とその彼方についてどのように捉えていたか、神様から何を示され、どのように信仰 を深められたかをご講義くださいました。
創世記の天地創造の場面の「あなたは塵だから、塵に帰る」という一節は霊肉一元論、死んだら肉体も魂も消滅するという思想を表しているとのことです。古代の人々の死に対する考え方の一例として、遊牧民であるアブラハムの妻サラの葬り方もそっけないものだったというエピソードをお話くださいました。
また、隣接する文化圏からの影響を受け、レファーム(死者の霊)、レファイーム(冥界、陰府と呼ばれる死者の場所)という新たな認識が生まれたこと、神観が変化し、復活の思想や永遠の命といった観念が生まれたことについてもご解説くださいました。
現代に生きる私たちが死を思うとき、隣人愛をもって生きることがいかに大切であるかということ、そして、キリスト教のもつ死のイメージについて「千の風になって」の背景にある死生観を例に挙げて、語ってくださいました。
第2回 現代人の死生観と儀礼
講師:神戸女学院大学 学長・学院チャプレン 中野 敬一氏
録画配信:2022年2月22日~3月7日
超高齢化社会による弔うことの簡素化という現代日本の身近な問題にはじまり、日本人の死生観と儀礼の変遷について、詳しくご講義くださいました。
『古事記』のイサナギ、イザナミの神話や民間信仰の山中他界、常世の国など、死者の国はそんなに遠くなく現世と行き来できる距離だという「お盆」にも通じる考え方が古代日本には、もともとあったとご解説くださいました。また、仏教の葬送儀礼も交え、キリスト教の死生観についてお話くださいました。プロテスタントでは、「死をみて怖がるよりも復活したキリストに目を向け、神の救いと恵みを見なさい。」という考え方であるとのことです。また、仏教もキリスト教もお葬式や法事には、残された者がゆっくりと時間をかけて死を受け入れるという意味もあるとご教示くださいました。
終わりから今を見る「メメント・モリ」の思想や、悲しみの表出、共同体による慰めの大切さといったグリーフケアについてもふれてくださいました。
撮影風景