アートセミナー

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2025 アートセミナー「名作に秘められた意味を読み解く」報告
講師 大阪大学大学院人文学研究科教授
神戸女学院大学文学部非常勤講師
岡田 裕成氏

2025年6月23日 《第1回》ルネサンスの「愛のアレゴリー」:
フィレンツェの画家ブロンズィーノの名作を読む

 今回はマニエリスムの代表的な画家、ブロンズィーノの作品『愛のアレゴリー』
をじっくりと読み解きました。マニエリスムとは盛期ルネサンスに既に確立した
様式・手法(「マニエラ」)をさまざまに組み合わせて、さらに洗練された表現を
目指した芸術様式です。
 まずこの絵の正面手前の女性と少年は誰でしょうか?少年には翼があるのでクピド、
女性は母親のウェヌスで、二人は禁じられた快楽の世界にいるものと思われます。
次に背後の暗がりに描かれた女性は何なのか?よく見ると彼女は半身半獣で、手には
蜂の巣とサソリを持っています。1603年に出版された「エンブレム・ブック」の
『イコノロジア』ではこの図像は「甘いものに見えて実は毒」、つまり「欺瞞」を
意味するとしています。
 「裸のウェヌスと彼女に接吻しているクピドの側には快楽と戯れが、またもう一方
の側には欺瞞と嫉妬が描かれている」とはヴァザーリの解釈ですが、これが正解とは
限らず他の解釈の余地を残すところにマニエリスムの面白さがあります。マニエリスム
の美術は各地の宮廷で広まり、奇想に富み、時に複雑な寓意を含んだ作品を数多く生み
だしました。

2025年7月14日 《第2回》知られざるアルハンブラ宮殿:
イスラムの美に接続された古代ローマへの夢を読む

今回は建築様式に込められた潜在的な意味を読み解くというテーマで、建築
モニュメントや景観に焦点を当てて講演していただきました。
具体例として、ホワイトハウスが古代ギリシャの神殿建築を模倣していること
を挙げました。これは単なる美しさだけでなく、「ヨーロッパ文明の源流」
「民主主義の発祥の地」「強大なローマ帝国の建築様式」といった意味が込め
られており、アメリカという新しい国の権威を示す意図があり、さらにワシン
トンDCの都市景観全体が、このようなメッセージを読み取れるように設計され
ているといえます。
そして今回の主役であるアルハンブラ宮殿が、なぜキリスト教徒に征服された
イスラム建築なのに破壊されずに残ったのかを考察しました。
建築様式の美しさだけでなく、征服した側の政治的意図、特に新旧の権威の交代
と継承を可視化するシンボルとしての意味があったことを示唆します。
カルロス1世がアルハンブラ宮殿内に建設させた古典主義様式の宮殿は、その昔
ローマ帝国時代の五大賢帝の一人であるハドリアヌス皇帝の別邸を模したと言わ
れています。イスラム建築の正面を塞ぐように配置された建物は、その権力と征
服の事実を明確に示しています。
カルロス1世が自らをハドリアヌス皇帝になぞらえ、さらに全世界を一つにする
普遍の君主国建設のヴィジョンをモニュメントに刻みこんだアルハンブラ宮殿は、
まさに権力者たちの古代ローマへのあこがれと夢が刻まれているというとても興
味深い講演でした。
受講者の方から、「とても興味深かった、ぜひアルハンブラ宮殿へ行ってみたく
なった」、または「今日の講演を聞いてもう一度行きたくなった」との声も多く
いただきました。

2024アートセミナー「神戸女学院 岡田山キャンパスの過去・現在・未来
ー創立150周年に寄せてー 」報告
講師 学校法人 神戸女学院 前総務部長
井出 敦子氏

2024年10月9日 《第1回》岡田山キャンパスの造営と3人のアメリカ人

1933年に竣工した神戸女学院岡田山キャンパスは、2014年9月に創建時のヴォーリズ建築12棟が国の重要文化財に指定されました。「自然との調和をふまえた合理的なキャンパスで意匠的にも完成度が高く、昭和初期の建物群として価値が高い」、というのが指定された理由です。今回は、このキャンパス造営を導いた3人のアメリカ人について講演されました。

1人目は神戸女学院第5代院長のデフォレスト先生です。山本通から岡田山へ、キャンパス移転時の院長で、手狭になった山本通に代わる理想のキャンパスを求めて、資金集め等に力を尽くされました。

2人目は岡田山キャンパスを設計したヴォーリズ氏です。1934年4月に挙行された新しいキャンパスの献堂式のためにヴォーリズが作詞・作曲した「献堂讃美歌」を聴くと、彼がこの新しい校舎にこめた思いがよくわかります。彼の設計思想はキリスト教に根ざした神戸女学院のリベラルアーツ教育の精神とまさしく合致するものでした。

そして3人目は、新キャンパス造営の大事業を実務的に支えた学院の財務主管で、新校舎の建築委員長を務めた、財務担当宣教師のハケット氏です。

図書館本館にあるらせん階段は「真実に至る道は曲がりくねった階段をのぼるようなものである」という精神を象徴するものとして、ハケット氏の発案によってつくられたと言われています。日米関係の悪化により1941年に帰米しましたが、終戦後再び来日したハケット氏は、今度は国際基督教大学の創設に初代財務担当副学長として関わり、主任建築家に選任されたヴォーリズ氏と時を経て再び協働する機会を得たのでした。

受講者からは「ハケット氏については初めて聴く話ばかりで、興味深かった」、「この岡田山に学校を作られた方々の物語がリアルに感じられ、熱意と覚悟が伝わってきた」などの感想が寄せられました。

2024年12月4日 《第2回》岡田山キャンパスの90余年の歩みと新しいチャプター

今回は、『重要文化財 神戸女学院 ―ヴォーリズ建築の魅力とメッセージ〈創立140周年記念版改訂版〉』(2019年発行)という美しいカラー写真が満載の冊子や、講師が訪問したボストンの教会や図書館の写真などを見ながら、重要文化財神戸女学院の魅力をさまざまな角度から紹介していただきました。

重要文化財に指定された建物の現在の写真を1933(昭和8)年の移転当初の写真と比べると、当時からほとんど変わっていないことがわかります。この点も重要文化財に指定される際の大きな評価点になりました。しかし第二次世界大戦の際の金属提出によりとりはずされたバルコニーや照明器具などは、戦後再建されたものもありますが、失われたままのものもあります。文学館の玄関の扉上部に設置されていたロートアイアンの飾りもこの時取り外されましたが、型を取ってベニヤ板の代替品が作られ、今も扉上部を飾っています。戦中・戦後の厳しい時期にも校舎の美観が大切に守られていたことがわかります。

「キャンパス造営は困難な事業でしたが、スタンフォード大学によく似た、渡り廊下が特徴的な素晴らしいキャンパスが出来上がりました」とは岡田山キャンパスの総建築委員長を務めたH.W.ハケット氏のご子息、R.F.ハケット氏がキャンパス移転80周年に際して寄せてくださった祝辞の中で語られた言葉です。実際、文学館、図書館、理学館、総務館の四館にはそれぞれ玄関が設けられているものの、ほとんどの人は、そこからではなく渡り廊下を利用して各館に出入りしています。そして中庭を挟んで対称に建てられた文学館と理学館は窓などのデザインなどが微妙に変えてあり、それが洒落た雰囲気を演出しています。

ソールチャペルのバラ窓が建物の中からはほぼ見えなくなっているのは、のちにパイプオルガンが設置されたためです。またソールチャペルの二階の三つ葉のクローバーがあしらわれた欄干は、神戸教会の旧会堂にあったものをいただいて使わせていただいています。三つ葉のクローバーのデザインは会衆派教会の流れをくむ教会でよく見られ、米国ボストンのオールド・サウス教会にも同じデザインが使われています。またボストン公共図書館の中庭や閲覧室の作りには神戸女学院との類似点が見られます。当時のボストンにはアメリカンボード(会衆派教会の海外宣教団体)の本部もあり、会衆派の自由な校風の神戸女学院とボストンとの深いつながりが感じられます。

最後に、デフォレスト先生が1951年に神戸女学院大学女子青年会に寄せてくださった詩を引いて、神戸女学院の建物は重要文化財になったから尊いのではなく、神戸女学院魂を養い育てる場所に相応しい器として私たちに与えられているものであり、これからも大切にしていってほしいと締め括られました。

2024アートセミナー「名作への旅」報告
講師 大阪大学大学院人文学研究科教授
神戸女学院大学文学部非常勤講師
岡田 裕成氏

2024年6月3日 《第1回》ミラノにレオナルドの大作《最後の晩餐》を訪ねる

レオナルドの《最後の晩餐》を中心に、ミケランジェロやラファエロも活躍した「盛期ルネサンス」(1490年代半ば~1520年頃)について講義いただきました。

フィレンツェで生まれたレオナルドは、故郷の画家の元で修行を始めましたが、絵画だけではなく、自然科学、工学、解剖学など様々な分野、特に水や空気などの流体に深く興味をいだいたそうです。やがてミラノ領主の保護を得て数々の作品に取り組みました。その一つが、1495年頃に修道院の食堂に描いた《最後の晩餐》です。透視図法、左右対象、三角形の構図を用いて、ルネサンス芸術の理想を実現したものの一つとされているとのお話でした。

レオナルドのもう一つの代表作《モナリザ》は、スフマート技法を繊細で優美に完成させたものだそうです。透明度の高い絵の具の層を塗り重ねて、色彩のわずかな変化を描く技法で、あいまいな表情の移ろいを表現することが可能となりました。その結果「謎めいた笑み」を生み出しているそうです。

参加者からは「誰でもが知っている芸術家、作品についての岡田先生の解説がとても楽しかった」「先生のおかげで、名画が私の中で本当に価値ある作品となった」などの感想が聞かれました。

2024年6月24日 《第2回》スペイン、エル・エスコリアル宮殿探訪:
死を思う国王フェリペ2世の祈りの空間

スペイン・マドリッド県のエル・エスコリアル宮殿について解説いただきました。フェリペ2世によって建てられたもので、聖堂を中心にして宮殿と修道院がある、非常にユニークな建物です。フェリペ2世は、父カルロス1世が獲得した領土を引き継いだだけではなく、新たにポルトガルの王位も継承するなど、莫大な富と権力を手に入れました。彼がこのユニークな宮殿を建てた理由は、建物の美術装飾を見ていくことで解明されるそうです。

まず天井のフレスコ画は、三位一体を頂点として死後の救済が描かれています。主祭壇の絵は、画家を交代させて描き直しを命じたほど、フェリペ2世のこだわりが見られるそうです。その下にある聖櫃は、聖体が納められている場所で、さらにその下の地下には、王室墓所があります。死後の救済を求めてここから天井へと昇っていく構造に、一族の救済の祈りが読み取れるとのことです。

一方、この建物にはフェリペ2世の寝室もあります。寝室は聖堂から通路で直結した場所にあり、枕元から祭壇が見えるようになっています。通路の途中には個人礼拝堂があり、ティツィアーノの《十字架を担うキリスト》が飾られ、王は毎夜ここで過ごしたと言われているそうです。

このようにこの宮殿は、世界の海を支配した権力者フェリペ2世が、死を思う祈りの空間として建てられたと言えるとのお話でした。

「世界史も含めてのお話で分かりやすかった」「フェリペ2世と日本の使節との関わりが面白かった」「ぜひ訪ねてみたいです」などの感想が聞かれました。

2023アートセミナー報告
古典倶楽部~テーマに沿って高校の教科書を読み直す~
「源氏物語の名場面」(全6回)
講師 元神戸女学院中高部非常勤講師 89錦田 靖子氏

2023年11月17日 第5回 巻十二「須磨」・巻十三「明石」

当初10月6日(金)に予定されていた第5回は、講師のご都合により11月17日(金)に
代替開催となりました。

『須磨』では、父・桐壺院が亡くなり政敵からの圧迫が強くなる中、
さらに右大臣の娘・朧月夜との仲が発覚します。追い詰められた光源氏は、自ら都を離れ須磨に退去。畿内西端での男所帯の侘び住まいで、光源氏も男性従者も望郷の思いを募らせます。

『明石』では、連日の荒れ模様の中、嵐が鎮まるよう住吉の神に祈りますが、落雷で邸が火事に見舞われます。<嵐が収まりまどろむ光源氏の夢枕に桐壺院が現れ、須磨を離れ都に戻るよう告げます。翌朝、夢のお告げと言って小舟で迎えに来た明石入道に導かれ、明石に移ります。
(その後、光源氏は入道の娘・明石の方と結ばれ姫君を授かり、帰京後は順調に昇進し、雅やかな栄華の時代を迎えるのです。)

都での若き日は、母性を追い続けるも満たされず、女性たちの間で過ごした優美で不確かな青年期であり、須磨での男所帯の侘び住まいは、後の成熟した壮年期を迎えるための転換期として重要な意味を持つと言えるでしょう、とのお話でした。

受講生全員による音読は、コロナ下では控えていましたが、今回久しぶりに行うことができました。受講生からは、「もう一度教科書を復習してみます」「身近な場所が舞台なので、興味深かった」「先生の朗読は流れるようで分かりやすかった」などの声が寄せられました。  

 

2023年12月1日 第6回 巻三十四「若菜上」

朱雀院は病気を患い出家しようとしますが、後ろ楯のない愛娘女三の宮の将来を心配し、
娘を弟の源氏に託します。源氏は兄の懇請を拒み切れず女三の宮を妻として六条院に迎え入れましたが、そのことで紫の上は深く傷つきます。

春の六条院では夕霧や柏木など若い公達が集まって、華やかな蹴鞠の宴が催されていました。
偶然にも唐猫のいたずらによって御簾が引き上げられ、女三の宮の姿があらわになってしまいます。 かねて女三の宮に思いを寄せていた柏木は、この垣間見によって思慕の念をますます募らせるのです。

六条院は、この世のすべての成功を手にした光源氏の、栄耀栄華を象徴する場所でした。
しかし、柏木の一方的な情熱がその絶対的安定感を揺るがします。 光に満ちた世界に陰りが差し、六条院の栄華は根底から覆されていくことになります。 やがて光源氏は自らの罪深さと因果応報の節理に直面せざるをえなくなり、苦悩に満ちた晩年期へと 向かっていきます。

これから起こる悲劇を予感させ、作品全体のスリリングな転換点となっているこの場面は、
「源氏物語」の中でも屈指の名場面と言えるでしょう、とのお話でした。

受講者からは、「臨場感にあふれた解説で大変勉強になった」 「とてもわくわくした。自分で読むだけではこのような深堀りはできない」 「今だからわかる古典の奥深さを知った」などの声が寄せられました。

今回で錦田先生のご講義は最後となりました。長い間ありがとうございました。

2023アートセミナー報告
◆名作への旅(全2回)
 講師:大阪大学文学研究科教授・神戸女学院大学文学部非常勤講師 岡田裕成先生

第1回 6月5日(月)
サン・ピエトロのピエタ:ローマに若き日のミケランジェロの名作を訪ねる

ルネサンスを代表するミケランジェロが若き日に制作し、現在サン・ピエトロ大聖堂内に安置されている<ピエタ>について詳しくご講義いただきました。
キリストの死を悼む図像<ピエタ>の制作に纏わる作者の意図を興味深く拝察させて頂きました。

 第2回 6月19日(月)
ヘントの祭壇画:ベルギーの小都市に訪ねるファン・エイク兄弟の珠玉の作品

初期ネーデルラント絵画を代表する画家ファン・エイク兄弟が15世紀初頭に制作し、現在もヘントのシント・バーフ大聖堂に安置されている多翼祭壇画<ヘントの祭壇画>について、その歴史的背景や新しい画法(油彩)等についてご講義いただきました。作品の銘文に刻まれた聖書の言葉から神学的メッセージを読み取り、聖堂に集う会衆の信仰を促すために描かれた作者の意図に思いを馳せました。

2022アートセミナー報告
古典倶楽部~テーマに沿って高校の教科書を読み直す~
「源氏物語の名場面」(全6回)
 講師 元神戸女学院中高部非常勤講師  89錦田 靖子氏

第1回 5月27日 巻一「桐壺」、第2回 6月24日 「桐壺」と白居易「長恨歌」 

「源氏物語」は登場人物400人、原稿用紙にすると2300枚にも及ぶ大長編で、しかも文章は複雑です。文の途中で主語が変わることもあります。このため、錦田先生のご指導のもと、文中の会話に「」を付けたり、マーカーで重要な古語をチェックしたり、また敬語や文法に注意を払いながらじっくりと理解を深めて読み込みました。最後は全員で音読し、原文で源氏物語の世界を楽しむことができました。


第一回、巻一「桐壺」では、スタートにふさわしく、「光源氏の誕生」というテーマでご講義いただきました。
帝の寵愛を受けた桐壺更衣のこと、宮中での複雑な人間模様、その間に生まれた美しい皇子があえて臣籍降下して源氏の姓を賜る経緯などについて学びました。

第二回のテーマは ”「桐壺」と 白居易 「長恨歌」”  です。
桐壺の更衣を失くした桐壺帝の悲しみを記した場面では、白居易の「長恨歌」の中の「比翼の鳥」、「連理の枝」などを紫式部が模して書いたと思われる表現がいくつか見あたります。
これらから、当時、「源氏物語」の読者であった宮廷メンバーは必ず中唐の詩人 白居易の「長恨歌」を読み、教養として知っていたこと、また、紫式部自身、「長恨歌」のテーマ”純愛”から着想を得て、二重三重にイメージを膨らませたということが伺えます。
先生のご指導のもと、「長恨歌」を朗読してから「桐壺」を読みますと、まさしく、桐壺帝が、この玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋物語とご自分の悲恋を重ねあわせて、桐壺の死をお嘆きになっていることが、より理解できました。
今回も「『源氏物語』は原文を読んでこそ楽しめるのですよ。」という錦田先生のお言葉どおりのご講義でした。

 

 第3回 11月4日 巻四「夕顔」 

 巻四「夕顔」では、17歳となった光源氏が、ようやく御所の外の世界を知り、初めて庶民の暮らしにふれる様子が細かく描かれています。

 光源氏は乳母を五条に見舞った際、隣家の簾越しに垣間見た愛くるしい女性に、自分の素性を明かさずに歌を贈ります。この女性、夕顔は中流階級らしいおおらかでおっとりとした性格で、宮中の高貴な女性にはない素直な可愛いらしさがありました。すぐに恋に落ちた源氏は、夕顔を寂れた某院に連れ出しますが、その夜、枕元に現れた怪しげな女(もののけ)によって、夕顔は死に追いやられてしまいます。

 このあと、源氏は幾多の女性と浮名を流すこととなりますが、切なく悲しい結末となった若き日の夕顔との恋は、一瞬ゆえに、光源氏にとって、永遠の思い出となります。

 「夕顔」の巻には、「白き花」「白き衿」など白色の表現が散りばめられており、それがいっそう清楚ではかない夕顔のイメージを作り上げています。

(今回のアートセミナーも錦田先生のご丁寧なご講義で、『源氏物語』を原文で堪能することができました。)

 第4回 12月2日 巻五「若紫」

第4回は現代の教科書でも必ず取り上げられる 巻五「若紫」でした。

 おこり病のまじないに北山の高僧を訪れた18歳の源氏の君は、山桜が咲きほこり霞かかる             山深い草庵で、10歳くらいの美少女「若紫」の姿を垣間見ます。この少女は、源氏が恋い慕う            藤壺の女御に似ているのですが、それもその筈、藤壺と少女は、叔母と姪の間柄でした。

 運命に導かれた二人の出会いのこの場面は、『源氏物語』という壮大な物語の入り口とも              いえるとのこと。最後に皆で朗読し『源氏物語』の世界を楽しみました。

(今回のアートセミナーも錦田先生のご丁寧なご講義で、『源氏物語』を原文で堪能することができました。)

2022アートセミナー報告
「イタリア・フレスコ画の名品を読み解く」(全2回)
 大阪大学文学研究科教授、神戸女学院大学文学部非常勤講師 岡田裕成先生

第1回 6月6日

 第一回は、14世紀初頭、イタリアのパドヴァに建設された礼拝堂の内部に、ジョットが描いたフレスコ画が題材でした。父親の代から銀行業を営む富豪、エンリコ・スクロヴェーニが出資者です。当時のカトリック教会では高利貸しは大罪とされていた中、自身と一族の贖罪を願ってこの礼拝堂を建設したそうです。
 聖書の数々の物語で構成される壁画の中から、特に「ラザロの復活」の場面を詳しく解説いただきました。立体感や臨場感豊かなジョットの絵画は、ルネサンス美術の先駆けともいえるそうです。
 新しい造形表現を探求する芸術家と、イタリアの都市部に登場しはじめた富裕な市民との出会いによって作り上げられたのが、この礼拝堂とのことでした。

 3年ぶりの対面での開催となった岡田先生のアートセミナーには、雨天にも関わらず定員近い受講者が集いました。カラー写真をふんだんに見せていただきながらのご講義に「実物を見たくなりました」「次回の申し込みもして帰ります」などのお声も聞こえました。

第2回 6月20日

 第2回は、ルネサンスの巨匠の一人、ラファエッロがヴァティカーノ(バチカン)宮殿の「署名の間」に描いたフレスコ画を取り上げて、ご講義いただきました。16世紀の初頭に教皇ユリウス2世が制作を委託した、教皇の居室群のひとつです。
 プラトンとアリストテレスが中央に描かれた「アテナイの学堂」が特に有名なこの部屋には、4方の壁と天井の5面を使って「哲学」「神学」「法学」「詩学」の4つをテーマに、壮大な物語絵が描かれています。
 同じ時期にミケランジェロが天井画を描いたシスティーナ礼拝堂には、「最後の審判」に代表される当時のキリスト教の世界観が描かれているのに対し、この「署名の間」は、歴史上の人物や古代の神々など、多くの異教徒の姿が描かれています。ルネサンスの思想、とりわけ新プラトン主義が目指した〈古代哲学とキリスト教神学の調和〉が、教皇の執務のよりどころとして描かれているとのご説明でした。

2021アートセミナー報告
『古典倶楽部~テーマに沿って高校の教科書を読み直す~』
「生きているものたち~動物~」
 講師 神戸女学院中高部非常勤講師  89錦田 靖子氏

2021アートセミナー報告
古典俱楽部 ~テーマに沿って高校の教科書を読み直す~
前期「生きているものたち~動物~」

今年度は、緊急事態宣言のため、残念ながら前期第1回は中止となりました。

第2回 6月25日 犬 『徒然草』・『枕草子』
今では私たちの身近な存在である猫と犬。古典の世界では、猫は、上流階級が珍重する愛玩動物として描かれているのに対して、犬は、より古くから番犬として人々の身近な存在だったそうです。犬派にも猫派にも興味深いセミナーでした。

第3回 7月16日 猫 『更級日記』・『源氏物語』
亡くなった人の生まれ変わりや、帝の寵愛の対象、あるいは不義の恋愛の小道具として猫が登場する場面を読みました。『枕草子』からは、清少納言が苦手なもののひとつとして「猫の耳の中」を挙げている段も紹介いただきました。

後期 三つの物語

第4回 10月1日 「伊勢物語」 
日本最古の歌物語で、在原業平がモデルではないかと言われる「男」の一代記。千年以上前の作品にもかかわらず、人々の感情に共感できました。また、鬼が登場する不可思議な物語は、政権争いに関連する事件が下敷にあると教わり、興味深く感じました。

第5回 11月5日 「大和物語」
10世紀中ごろから末にまとめられた歌物語から、今回は、三つの物語を読みました。「姨捨」では、山に捨てに行った老女を、どうしても心が晴れないため、また迎えに行きます。その他、身分違いの男女の物語も読み、人としての情や哀感を感じました。

第6回 12月3日 「平家物語」
今回は、「祇園精舎の鐘の声」で始まる有名な冒頭部分を、まずは出席者全員で音読。和漢混交文の、力強く美しい響きを楽しみました。「木曽の最期」と「忠度の都落ち」に描かれた武士たちの最期の様子に、鎌倉時代の価値観に思いを馳せました。

 

2021アートセミナー ルネサンス美術の二都を歩く 全二回 岡田裕成先生
WEB配信のみ セミナー報告

2021アートセミナー「ルネサンス美術の二都を歩く」は
今回はコロナ禍ということで、動画配信のみでの開催となりました。


第1回 6月7日(月)~6月20日(日)
 ヴェネツィアの教会に静謐の画家G.ベッリーニの名品を訪ねる

 先生の実際にヴェネツィアで撮影されたお写真も交えた旅のお話から
はじまり、ジョヴァンニ・ベッリーニの一族、そして、ジョルジョーネへと
引き継がれるルネサンス美術、ヴェネツィア派の流れを解説いただきました。
 ジョヴァンニ・ベッリーニ作、「ペーザロの祭壇画」は、豪華な装飾のフレームに
囲まれた絵画で、その絵の中には、さらに同じようなフレームが描かれ、
フレームの中には、奥行きのある森や丘の風景。その前には、聖母に冠を与える
キリストとその弟子たち。まさに空間のトリック。
 ご講義の終盤には、ジョルジョーネ作、「嵐」が写し出されます。
先生が2時間、この絵の前で佇み、思いを巡らされたという作品です。
森の中で授乳する女性、騎士、森の奥の空には真っ黒な雲と雷鳴。
エメラルドグリーンの不思議な世界が広がります。
答がないのが答。自由に想像を広げて。
先生の絵画を鑑賞する喜びがこちらにも伝わってくるご講義でした。
第2回 6月21日(月)~7月4日(日)
 フィレンツェ、メディチ・リカルディ宮殿の壁画装飾

 メディチ家の礼拝堂の壁画を中心にしたご講義でした。
 莫大な資産を築いたコジモ・デ・メディチは人生最後に自身の救済を求めて
壮大な一枚の壁画を発注。
 マギとよばれる3人の賢者がキリストの生誕を祝うためにベツレヘムへと
旅する物語です。行列の中にメディチ自身や、作者ベネッツォ・ゴッツォリの姿も。
礼拝堂の中で、聖地巡礼と毎日の祈りを完結できる仕掛けとなっています。

ステイホームの中、皆さまにイタリアの風を感じていただけたことと思います。

アンケートでは、動画配信という新しい試みに、ご好評のメッセージを多数いただいております。画像も音声もクリアだったとのこと。
平日お仕事の方、ご遠方の方(東京、長野、シンガポールなど)にもご参加いただくことができました。

お問い合わせ・お申し込みはめぐみ会事務局まで
9:00~16:30 土・日・祝休み

〒662-8505 西宮市岡田山4番1号
電話(0798)51-3545
FAX(0798)51-3602

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